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スコア+パート譜セット
【編成】
弦楽オーケストラ(1st Violin, 2nd Violin, Viola, Violoncello, Double Bass)
【難易度】4.中級〜上級者向き
【作品名】干潟の鳥渡り
【作曲】
小室昌広 (Masahiro Komuro)
【演奏時間】2分30秒
本作品は尚美ミュージックカレッジ専門学校の弦楽合奏授業の教材として制作されました。
演奏面での主眼は、二つの声部間に生じる拮抗する音程をその前後の文脈を踏まえて表現することです。また、スラーの最後にくる短い音が粗末にならないように弓の動きをコントロールすることが、この楽曲の表現に肝要であることも、授業を行う中で見えてきました。また伴奏部分では、滑らかな移弦を伴い徐々にサイクルが加減速するモチーフをアンサンブルのなかで整然と取り扱うことが求められています。
楽曲の全体像としてサラバンドの曲調を取り入れました。バロック期におけるサラバンドの独特なアクセントを理解して演奏すると、より表情豊かな音楽となるかと思います。
作者の住んでいる家の近くには干潟があり、季節の変わり目には渡り鳥の旅立ちと飛来を目にします。この曲は、旅立っていく鳥たち、また遠くからやってきて羽を休める鳥たちを、干潟の縁に佇みながら眺め、その鳥たちに想いを寄せる情景を描いています。
楽曲の構成はシンメトリックになっていて、前半は渡り鳥の干潟からの旅立ち、後半は別の渡り鳥の干潟への到来を表現しています。
冒頭は旅立ちの不安を想わせる4声のコラールで始まります。この部分のファーストヴァイオリンの音形自体もシンメトリックになっていてサラバンドのおおまかなリズムを持っています。そしてこの音符を線でつなぐと鳥が羽を広げて首を伸ばし飛び立とうとしている形に見えるでしょう。この音形の完全に反転したものをチェロが同時に弾いており、譜面の視覚上では干潟の水面に映る鳥の影のようになっています。
コラールの終わりから、ヴィオラとチェロが幅広い音程を上下に行き来するパッセージを弾き始めます。これは弾いている腕の動きそのものが鳥の羽ばたきに見えるようになっていて、徐々に動きが増して飛び立つ様を表すことができるでしょう。
これにふたつのヴァイオリンがコラールのテーマを短縮したメロディーとそれにまとわりつくような対旋律を交互に歌います。メロディーに増4度(あるいは減5度)を用いて、旅立ちの不安感を強めています。
このアンサンブル形態の旋律と伴奏が入れ替わった(ヴァイオリンが2度の重なりで動く伴奏は鳥の鳴き声にも聞こえることでしょう)のち、渡り鳥が干潟を離れ空の彼方へ飛び立つ様が、拮抗する音の連なりが上昇してゆく宗教曲的なフレーズで表現されて、ファーストヴァイオリンの高い音へ収束します。
そこに再び音が重なり今度は下降してきます。干潟へ帰ってくる鳥の飛来を表します。
こののち前半と同じような音楽が現れますが、メロディーの形は反転して、鳥が嘴を下に向けて下降している形となり、音程も増減音程がなくなり、長旅を終えて着陸する安堵と感慨を表します。コントラバスはサラバンドのリズムを踏まえた音形で楽曲の表情を増幅します。
リズムを拡張しながら大きなカデンツを作り、鳥が干潟に着陸したことを表すと、干潟の広々とした光景と旅の達成感を表す壮大なコラールが奏されて曲を閉じます。ここでもファーストヴァイオリンとチェロは互いが鏡に映ったような音形となっています。
本作品は、弦楽合奏の授業用作品を連作として制作する中で、各曲に「四季のイメージ」を持たせることを試みたシリーズのひとつであり、本作は“秋から冬へ”の情景を描いた一曲となっています。
冬が近づく頃から学校では卒業への準備が徐々に始まってきます。この曲に描いた情感は、学生たちの学校からの旅立ちやその先にある様々なことなどを連想することもできるかと思います。干潟は学校や教員に例えることもでき、旅立つ者を送り、また新たに希望を持った者を受け入れる様を連想することもできるでしょう。そのような想いを楽曲に込めていくことも情操を育むことになるのではと考えながらこの曲を作りました。
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